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気になるメディカルトピックス・コラム

2023/07/05

消化管出血にトラネキサム酸は有効か?

Effects of a high-dose 24-h infusion of tranexamic acid on death and thromboembolic events in patients with acute gastrointestinal bleeding (HALT-IT): an international randomised, double-blind, placebo-controlled trial   Lancet. 2020 Jun 20;395(10241):1927-1936.

(背景) トラネキサム酸は術中出血や、外傷患者の出血による死亡を減少させることが示されている。小規模試験のメタ分析では、トラネキサム酸が胃腸出血による死亡を減少させる可能性があるとされていたが、対象となった試験の規模が小さく、大規模な試験での確認が必要であった。

(方法) 2013年7月4日~2019年6月21日の間、15カ国、164病院で、トラネキサム酸投与郡とプラセボ投与郡に無作為に割り付けた。上部または下部消化管出血の患者で、トラネキサム酸使用に絶対的禁忌項目がないこと。各国で成人とみなされる年齢である(16歳または18歳以上)患者が対象となった。患者はランダム化後、タイムラグがないように治療が開始された。主要アウトカムは、無作為化後5日以内の出血による死亡であった。そのほか、薬剤投与までの時間(3時間以内、3時間以上)、出血部位(上部、下部)、静脈瘤出血の有無、・肝疾患の合併の有無によりサブグループ解析が行われた。

(結果) 12,009人の患者が無作為化された。患者背景は、出血の症状出現後に8時間以上経過していたものが半数以上、上部消化管出血が80%以上、抗血栓薬を内服していない患者が90%以上、肝疾患を合併している患者が40%以上であった。5日以内の出血死は、トラネキサム酸群では患者5,956人中222人(4%)、プラセボ群では患者5,981人中226人(4%)であった。動脈血栓塞栓症イベント(心筋梗塞または脳卒中)は、トラネキサム酸群とプラセボ群で同様であった(5952人中42人[0.7%]対5977人中46人[0.8%])。静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)は、プラセボ群よりもトラネキサム酸群で高かった(5952人中48人[0.8%]対5977人中26人[0.4%] )。

(結論) トラネキサム酸投与で5日以内の出血死は減少させなかった。副作用として静脈血栓症、痙攣を増加させた。過去の研究では、頭部外傷や産後出血では発症後3時間以内の投与で有意差があったが、本研究ではサブグループ解析にて有意差はなかった。本研究では出血が始まった時間を発症時刻としており、真の発症時刻ではなく、効果が減弱した可能性がある。血栓症が増加した原因として、本研究でのトラネキサム酸投与量は過去の2倍であったことや、線溶系の低下しやすい肝疾患を有する患者が約半数であったことなどが考えられる。

JA徳島厚生連 阿南医療センター 内科 三輪 美咲

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