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気になるメディカルトピックス・コラム

2023/06/07

血管内大細胞型B細胞リンパ腫をどう診断するべきか?

Comparison of serum sIL-2R and LDH levels in patients with intravascular large B-cell lymphoma and patients with advanced stage diffuse large B-cell lymphoma

Journal of clinical and experimental hematopathology Vol. 63 No. 1, 25-31, 2023

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma:IVLBCL)は、腫瘍細胞が全身臓器の細小血管内に選択的に増殖する節外性B細胞リンパ腫の稀な一病型です。悪性リンパ腫の一般的な特徴であるリンパ節腫脹がなく、発熱や全身倦怠感など非特異的な症状にて発症し、診断に難渋する病態です。診断時期が遅れることによって全身状態の悪化が急速に見られ、予後不良の疾患でしたが、近年治療法も確立してきたため、早期診断の重要性が高まっています。

【背景】 血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVL)は、血管内で選択的に腫瘍が増殖することを特徴とするびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の1病型で、臨床症状は非特異的であるため診断に時間がかかり、その経過は致命的であることが多い。血清可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)および血清乳酸脱水素酵素(LDH)値は、様々なリンパ腫で上昇することが知られているが、B細胞リンパ腫におけるsIL-2Rが上昇するメカニズムは完全には解明されていない。本研究では、IVL患者39名について、sIL-2RやLDHなどの検査所見とB症状の有無を解析し、DLBCL stageⅣ患者56名と比較した。

【方法】 岡山大学病理学教室外科病理コンサルテーションファイルの中から、IVLBCL患者39名(2002年から2020年まで)およびDLBCL NOS stageIV患者56名(2017年から2018年まで)の臨床記録から抽出した年齢、性別、血清sIL-2R 値、LDH値、CRP、生検部位B症状の有無などを後方視的に解析した。

【結果】 sIL-2R、LDHともにDLBCL NOS群よりIVL群の方が有意に高かった(それぞれp = 0.035, p = 0.002)。またHb、血小板、Alb値がIVL群で有意に低値で、CRPが高値であった(それぞれp = <0.001, p = 0.001, p = 0.001, p = 0.001)。IVLでは、sIL-2R、LDHともに、B型症状の有無にかかわらず有意差はなかった(それぞれp=0.206、p=0.441)。

【結論】 原因不明の発熱を伴う症例で貧血、血小板減少、低アルブミン血症、CRP上昇などの全身性の炎症があり、血清sIL-2R、LDH値の上昇を認める症例でIVLBCLを疑い迅速に診断に繋げることはIVLBCL患者の予後改善に大きく寄与する可能性がある。IVLの血清sIL-2R,LDH値の上昇とB症状の頻度の高さはIVLの腫瘍増殖環境に起因している可能性がある。これらの仮説を検証するためにはさらなる研究が必要である。

(担当:阿南医療センター 内科 村井純平)


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