TOP > 気になるメディカルトピックス・コラム一覧 > 気になるメディカルトピックス・コラム詳細

気になるメディカルトピックス・コラム

2022/04/27

動脈硬化性心血管疾患の発症リスクを予測する

糖尿病の治療の目的はいくつかありますが、その一つに動脈硬化に起因する疾患を予防することがあります。主には心筋梗塞と脳梗塞であり、ともに生命の危機に直結する場合や身体的な後遺症に繋がる可能性があります。もちろんこれらの疾患の発症は糖尿病に特有なものではなく脂質異常や高血圧が関わることがよく知られていますし、喫煙や肥満などの生活習慣や、加齢や性別などが複合的に関与するとされています。

   このような複数の要素がどのように関わって発症に至るのか、そのメカニズムの詳細は不明ですが、これらの要素がどの程度の重みをもって発症に至るのかを日本人で解析した論文(J Atheroscler Thromb,28,2021)が発表されています。「年齢,性別,収縮期血圧,糖尿病の有無,HDLコレステロール値,LDLコレステロール値,蛋白尿の有無,喫煙習慣の有無,運動習慣の有無」の9つの因子をスコアリングして10年以内の心筋梗塞や脳梗塞の発症確率を1%未満から50%以上までで数値化します。糖尿病を始めとしたいわゆる生活習慣病の管理は、多くの場合将来の合併症の発症リスクを軽減するためになされる訳ですが、この論文で示された予測モデルにおける各因子の重み付けを見てみると年齢と性別(男性がリスクが高い)の影響が大きく、生活習慣病の程度が及ぼす影響は小さいことがわかり現代医学の限界を知らされる思いがしました。

   現在、日本動脈硬化学会がこの論文を参考に動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改訂作業を進めています。今夏には発表される予定ですが、この発症予測モデルに基づいてどのような予防指針が示されるのか大変注目されます。

(担当:湯浅智之)

2024年度のお知らせ

2023年度のお知らせ

2022年度のお知らせ

2021年度のお知らせ

2020年度のお知らせ

2018年度のお知らせ

2017年度のお知らせ

2016年度のお知らせ

2015年度のお知らせ