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気になるメディカルトピックス・コラム

2020/11/02

メトホルミンは認知症を予防する?

Metformin Use Is Associated With Slowed Cognitive Decline and Reduced Incident Dementia in Older Adults With Type 2 Diabetes: The Sydney Memory and Ageing Study

Katherine Samaras et al.  Diabetes Care 2020 Sep

 現在日本は高齢化社会の一途を辿っており、以前より取り上げられていた2025年問題も目前になりました。

前回、その新しい作用機序の側面をご紹介させて頂いたメトホルミンは(Diabetes Care 2020; 43(8):1796-1802)、糖尿病改善以外の多面的作用から長年愛され使用されていますが、一方で乳酸アシドーシスなどの重篤な副作用のリスクもあるためご高齢の方には積極的に使い難いとする意見もあります。今回はそのような高齢者をターゲットとして、メトホルミンが認知症発症抑制に有用性を示した報告をご紹介させて頂きます。

対象は認知症や主要な神経・精神疾患、進行性の悪性腫瘍を有する患者様を除いたオーストラリアのとある地域在住の高齢者1,037人(70~90歳)です。うち123人が糖尿病を有し、67人がメトホルミンを内服していました。彼らを非糖尿病群・糖尿病かつメトホルミン内服群・糖尿病かつ非メトホルミン内服群の3群に分け、2年毎に認知機能の評価を行い、MRIで海馬等の脳容積も評価されました。

  結果は、糖尿病かつメトホルミン内服群の方が非メトホルミン内服群と比較して全般的な認知機能および実行機能の低下が有意に緩やかでした。認知症の発生率についても、非メトホルミン内服群はメトホルミン内服群に比較して有意に高く(オッズ比5.29、P=0.05)、脳容積については全群で有意差はありませんでした。

 今回の結果からメトホルミンを使うことで糖尿病による認知機能の低下を非糖尿病患者と同程度に減弱し得ることが示唆されました。もちろん腎障害が存在したり、容易に脱水傾向になられる患者様では積極的に選択すべきではないと思われますが、この結果を踏まえるとご高齢の糖尿病患者様の治療の選択肢としてメトホルミンを加えてもよいのかもしれません。今後、大規模ランダム研究でのエビデンスの強化が検討されています。

(担当:安井沙耶)

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