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気になるメディカルトピックス・コラム

2021/09/15

インスリンはCOVID-19の予後を悪化させる?

COVID-19の重症化リスクに糖尿病が挙げられますが、加療中の血糖管理が良好な場合は、予後は悪化しないことも報告されています。サイトカインストーム予防にステロイドが使用されますが、そのために血糖上昇があった場合は、インスリン使用は必須になります。しかしながら、COVID-19の予後に関するインスリンの功罪を示唆する報告が出ています。

Insulin Treatment Is Associated with Increased Mortality in Patients with COVID-19 and Type 2 Diabetes
Bo Yu, Chenze Li, Yang Sun, Dao Wen Wang
Cell Metab. 2021. 33:65-77
【背景】
COVID-19 は糖尿病を有する重症患者の多臓器障害と死亡率を増加させる。強力な血糖管理は、COVID-19に感染した糖尿病患者の死亡率を低下させるが、インスリンを用いた治療がこれらの患者に有用か否かは明らかでない。

【対象と方法】
中国武漢のTongji病院で行われた3305症例のコホート研究から689名(年齢中央値 66歳:男性364名、女性325名)の死亡もしくは退院したCOVID-19感染症糖尿病患者について後方視的に検証した。インスリン使用群は入院中に少なくとも3日間インスリン単独もしくは、他剤との併用治療を受けたものとした。また低血糖イベントは血糖値70mg/dl未満もしくは、何らかの低血糖症状を呈するものとした。

【結果】
入院期間は両群で差異は無かったが、予想に反して、インスリン使用群では、インスリン非使用群に比較して死亡率が増加していた(インスリン使用 群27.2% vs インスリン非使用 群3.5%, 調整後ハザード比 5.38【2.75-10.54】)。インスリン使用群では、低血糖イベントが増加したが(29.7% vs 1.4%)、インスリン使用群における死亡率に関しては、低血糖イベントの有無は影響しなかった。
臨床データの解析では、インスリン使用群は、HbA1c<6.5%・リンパ球数1100/μl未満・アルブミン 3.5g/dL未満・NT-pro BNP 285pg/L以上・hsCRP 1mg/dl以上・IL6 7pg/ml以上の各条件下で死亡率が悪化した。また薬剤別の解析では、インスリン治療に比してメトホルミン・αGI・SU剤は予後が良好であったが、DPP4阻害薬は有意差を認めなかった。

【結論】
COVID-19感染症糖尿病患者に対するインスリン治療は、適応を十分考慮し、慎重に行う必要がある。

(担当:粟飯原)

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