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2022/09/28
これまでは腎障害患者には、蛋白制限が食事療法の基本とされて来ましたが、今回の報告は、逆の結論を示す、興味深い結果です(Diabetes Care 2022;45:35–41)。
【目的】腎機能低下は、2型患者の20-40%に見られ、従来慢性腎臓病の悪化防止には、蛋白質摂取制限が行なわれてきた。近年、2型糖尿病患者の食事療法には炭水化物の摂取制限が行われることが多くなってきたが、必要エネルギー確保の代償に、蛋白質摂取量を増やす必要がある。そこで、本研究では、2型糖尿病患者における腎機能低下と蛋白質摂取量の相関を明らかにすることを目的とした。
【方法】Diabetes and Lifestyle Cohort Twente (DIALECT) study における382名の2型糖尿病患者において、前方視的に解析を行った。蛋白質摂取量は24時間尿素窒素排泄量からMaroni方程式(1日蛋白質摂取量 (g/day) =[1日尿中尿素窒素排泄量 (g) + 0.031 ×体重 (kg)]×6.25)で算出した。腎イベントの定義は腎代替療法の導入もしくは持続的な50%以上のCrの上昇とした。Cox proportional hazards modelが蛋白質摂取量と腎イベントの関連解析に用いられた。また腎イベントを左右する蛋白質摂取量の閾値を決定した。
【結果】 追跡期間の中央値は6年間で(4分位レンジ 5-9年)、53名(14%)の患者に腎イベントが発生した。平均蛋白質摂取量は、91 ± 27 g/day (1.22 ± 0.33 g/kg ideal body weight/day)であった。蛋白質摂取量は、有意に腎イベントと負の相関を示した (HR 0.62 [95% CI 0.44–0.90])。蛋白質摂取量が92g/day未満の患者は、腎イベントリスクが有意に増加した (HR 1.44 [95% CI 1.00–2.06])。その一方で、蛋白質摂取量が、163 g/day を上回ると腎イベントが抑制された(HR 0.42 [95% CI 0.18–1.00])。体重当たりの蛋白質摂取量は、1.08 g/kg/day を下回ると腎イベントが増加した(HR 1.63 [95% CI 1.00–2.65])。
【結論】 2型糖尿病患者において、蛋白質摂取制限を行わないことは、腎イベントを増加させなかった。従って、炭水化物制限を行う代わりに蛋白質摂取を行うことは禁忌ではなく、体重管理や、筋肉量の減少予防に寄与する可能性がある。
(担当:粟飯原賢一)
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