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気になるメディカルトピックス・コラム

2021/03/01

高齢者ではSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬どちらを使うべき?

Comparative Effectiveness and Safety of Sodium–Glucose Cotransporter 2 Inhibitors Versus Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists in Older Adults

Elisabetta Patorno et al.  Diabetes Care 2021 January 25

糖尿病の治療は年々新しい薬剤が登場し、2010年に発売されたGLP-1受容体作動薬や2014年に発売されたSGLT2阻害薬は日常診療に広く浸透してきました。さらにはインスリンとの合剤やGLP-1受容体作動薬の経口製剤などまだまだ選択肢は広がり続けています。

過去の研究からGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬はどちらも心血管系イベントに対して有用であることが報告されてきました。しかしいずれも65歳未満の患者での検討がほとんどで、高齢化社会の現在においては高齢者での検討も必要だと考え、今回の研究が行なわれました。

対象は2013年4月から2016年12月においてSGLT2阻害薬もしくはGLP-1受容体作動薬を初回導入された66歳以上の2型糖尿病患者90,094人です。主要評価項目はMACE(心筋梗塞や脳卒中、心血管死亡などの主要心血管イベント)とHHF(心不全入院)とし、その他DKA・性器感染症・骨折・下肢切断・急性腎障害・重症尿路感染症・全死亡も評価されました。

結果、およそ6か月間のフォローにおいて両群のMACEのリスクは同等でしたが、HHFのリスクはSGLT2阻害薬群で有意に低下しました。しかし心血管疾患の既往の有無でサブグループ解析を行うと、既往が無い場合はHHF発生の有意差が縮小する傾向となりました。有害事象については過去の報告と同様にSGLT2阻害薬群の方がDKA、下肢切断、性器感染症などが増加しました。

 今回の結果からは、心疾患既往のある患者様にはリスクベネフィットを鑑みた上でSGLT2阻害薬も選択肢のひとつかと思われました。一方で既往がない患者様には有益性が薄れることが示唆され、治療薬選択のための指標のひとつとしてもいいかもしれません。

(担当:安井沙耶)

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