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2023/06/27
Efficacy of Empagliflozin in Patients With Heart Failure Across Kidney Risk Categories
J Am Coll Cardiol. 2023 May 16;81(19):1902-1914. doi: 10.1016/j.jacc.2023.03.390.
(背景)HFとCKDが併発すると一方の症候群が他方の発症と進行のリスクを高めることが知られている.エンパグリフロジンは、HFrEFとHFpEFにおける主要な心不全転帰のリスクを軽減するが,CKDがHFrEF及びHFpEFの患者におけるSGLT2阻害薬の有効性に影響を与えるかどうかは明らかにされていない.
(目的)EMPEROR-ReducedとEMPEROR-Preserved試験にプールされた結果を用いて慢性腎臓病のスペクトル全体でのエンパグリフロジンの効果を評価すること.
(方法)合計9,718人の患者(EMPEROR試験で対象となったNYHA2-4でBNPの上昇している患者)が,KDIGOカテゴリーに従いeGFRおよびアルブミン/クレアチニン比に基づいて,それぞれ低リスク群32.0%,中等度リスク群29.1%,高リスク群21.9%,および超高リスク群17.0%に分類された.主要評価項目は、心血管死またはHF入院までの時間,総HF入院,初回のHF入院までの時間,心血管死,およびKCCQスコアによって評価された健康状態とした.eGFRの変化量(勾配)は①ベースラインからランダム化治療の中止後30日までのeGFRの年間減少率によって計算された交絡のない勾配②ベースラインから治験薬による治療中のさまざまな時点までの変化率によって計算された総勾配③治療4週間後の値と全期間語後の値からの変化率で計算される慢性勾配の3つの方法で算出した.
(結果)低リスク群の患者と比較すると,KDIGOカテゴリーで高リスクの患者は高齢で,女性の割合が高く,糖尿病、高血圧,心房細動の既往があった.また,KCCQスコアが低く,NYHAが高く,NT-proBNPが高値であった.高リスク患者では利尿薬の使用が多かったが,RAA系阻害薬とMRAの使用が少なかった.プラセボ群では、低リスク患者と比較した場合,高リスク患者はよりeGFRの低下率が遅いが,複合腎イベントのリスクは高かった.エンパグリフロジンは、すべてのKDIGOカテゴリーで同様に心血管死または心不全入院のリスクを低下させた(HR 0.81[低リスク], 0.63[中リスク], 0.82[高リスク], 0.84[超高リスク]).エンパグリフロジンは、慢性勾配、全勾配、または交絡のない勾配のいずれによって推定されたかにかかわらず,eGFRの低下を遅らせた.交絡のない勾配と比較すると,慢性勾配への影響の大きさが大きく,全勾配への影響は小さかった.EMPEROR-Reduced試験では,低リスク患者は、eGFRの低下率に対するエンパグリフロジンの最大の効果を示したが,このパターンは、EMPEROR-Preserved試験では観察されなかった.
(結論)主要な心不全イベントに対するエンパグリフロジンのベネフィットは、KDIGOカテゴリーの影響を受けなかった.薬物の腎効果の大きさは、eGFR勾配の計算に使用されたアプローチに依存していた.
JA徳島厚生連阿南医療センター 内科 瀬野弘光
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