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2023/01/25
Renin–Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease. Sunil Bhandari, et al.
N Engl J Med. 2022 Dec 1;387(22):2021-2032.
【背景】 軽症~中等症のCKD患者では、 RAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)を使用することにより、重症の進行性CKD(Stage4または5)への進行を遅らせる。進行CKD患者においてもRAS阻害薬の使用が有益であるかどうかの証拠はほとんどないが、観察研究では重症CKD患者においてRAS阻害薬を中止すると、eGFRが上昇し、その低下が遅延する可能性が示唆されている。
【方法】 RAS阻害薬の中止がeGFRを上昇させるか、あるいは安定化させるかどうかを評価するため、重症の進行性CKD患者を対象とした多施設非盲検無作為化試験(STOP-ACEi試験)が実施された。英国の37施設で参加者の登録が行われ、対象は年齢18歳以上、ステージ4または5のCKD(体表面積補正eGFR<30 mL/分/1.73m2)で、透析および腎移植を受けておらず、過去2年間にeGFRが2 mL/分/1.73m2以上低下し、ACE阻害薬またはARBの投与を6ヵ月以上受けている患者とした。被験者は、RAS阻害薬の投与を中止する群または投与を継続する群に無作為に割り付けられ、主要アウトカムは3年後のeGFRで、腎代替療法開始後のeGFRは除外された。副次アウトカムは、末期腎不全(ESKD)および腎代替療法の複合、腎代替療法(ESKD患者を含む)およびeGFRの50%以上低下の複合、死亡などであった。
【結果】 411例(年齢中央値63歳、男性68%)が登録され、投与中止群に206例、投与継続群に205例が割り付けられた。ベースラインのeGFR中央値は18 mL/分/1.73m2、29%がeGFR<15 mL/分/1.73m2、尿蛋白/クレアチニン比の中央値は1018 mg/gCrであった。また、糖尿病が37%、糖尿病性腎症が21%含まれた。58%が3剤以上の降圧薬、65%がスタチンの投与を受けていた。3年の時点で、最小二乗平均(±SE)eGFRの値は、中止群が12.6±0.7mL/分/1.73m2、継続群は13.3±0.6mL/分/1.73m2であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-0.7、95%CI:-2.5~1.0、p=0.42)。3年時のESKDおよび腎代替療法の複合(中止群62%[128/206例]vs.継続群56%[115/205例]、HR:1.28[95%CI:0.99~1.65])、腎代替療法(ESKD患者を含む)およびeGFRの50%以上低下の複合(68%[140/206例]vs.63%[127/202例]、RR:1.07[95%CI:0.94~1.22])、死亡(10%[20/206例]vs.11%[22/205例]、HR:0.85[95%CI:0.46~1.57])について、両群間に有意差はなかった。また、生活の質(KDQOL-36)や運動能(6分間歩行距離)にも有意差はなかった。重篤な有害事象(52%vs.49%)および心血管イベント(108件vs.88件)の頻度は、両群で同程度であった。
【結論】 重症の進行性CKD患者では、RAS阻害薬の投与を中止しても、継続した患者と比較して3年後のeGFR低下に関して臨床的に重要な変化はみられなかった
担当:阿南医療センター内科 河田 沙紀
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