TOP > 気になるメディカルトピックス・コラム一覧 > 気になるメディカルトピックス・コラム詳細

気になるメディカルトピックス・コラム

2020/09/28

脂肪肝における低酸素ストレス応答

2019年ノーベル生理学・医学賞は、「細胞がどのようにして酸素濃度を感知し,それに応答するかというしくみの発見」の功績で、William Kaelin 教授 (米国ハーバード大学)、Gregg Semenza 教授 (米国ジョン・ホプキンス大学)、Sir Peter Ratcliffe 教授 (英国オックスフォード大学)に贈られました。

低酸素ストレスに対する細胞の適応応答で中心的な役割を果たす転写因子が低酸素誘導性因子(Hypoxia-Inducible Factor: HIF)です。HIF-1が酸素濃度を感知し応答する仕組み(図1)の発見は、貧血やがんなどの多くの疾患の治療薬などの開発にもつながるということで、多くの注目を浴びています。「HIF活性化薬」としてPHD阻害薬が開発されており、最近、日本でも製造販売が承認されました。今回、低酸素ストレス応答と脂肪肝とのかかわりについて解析した論文をご紹介したいと思います。

メタボリックシンドロームの増加に伴い、その肝病変と言われる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD: Nonalcoholic Fatty Liver Disease)、特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH:NonalcoholicSteatohepatitis)は近年増加傾向にあります。現在のところ有効な治療方法はありませんが、病理組織学的には肝内への免疫細胞浸潤がみられることから、各種免疫細胞が病態に関与している可能性が高いと推測されています。マクロファージは、NASH の炎症反応において極めて重要な役割を果たします。    Wang らは、マクロファージ内のHIF-1α がNASH に及ぼす影響を検討しており(Wang et al. Hepatology 2019 February; 69(2): 545-563)、マクロファージにおけるHIF-1α の活性化は、NASHの進展に寄与することを明らかにしています(図2)。この様にHIFは生体内のさまざまな種類の細胞・組織でさまざまな役割を担っています。したがって、HIFの安易な活性化には懸念があります。PHD阻害薬による腎性貧血治療においても、その有効性に期待が寄せられる一方で、長期使用における安全性の担保は未知数です。今後、慎重に症例を積み重ねて詳細に有効性・安全性を検討していく必要があると考えます。

(担当:乙田)

2020年度のお知らせ

2018年度のお知らせ

2017年度のお知らせ

2016年度のお知らせ

2015年度のお知らせ