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気になるメディカルトピックス・コラム

2020/07/06

上部消化管出血に対して内視鏡を行うタイミングは早いほどいいのか?

上部消化管出血は消化管潰瘍や静脈瘤、胃炎などが原因などで起こり、吐血や下血などの症状を来す緊急疾患です。死亡率は6~10%と高く、抗血栓薬内服やNSAIDsの内服、H.pylori感染などがリスク因子として知られています。一般的なガイドラインでは、発症から24時間以内に内視鏡検査を行うことが推奨されています。

 24時間以内と言わずできるだけ早く行うほうがいいのでは?という疑問はもっともですが、施設によっては日中と夜間のスタッフの数や熟練度が異なったり、食事のすぐ後では視野が取りにくく、止血処置が難しいなど必ずしも早く内視鏡を行うことが患者のメリットにならない場合があります。過去の研究でもできるだけ早く内視鏡検査行うほうがいいという報告ばかりではありません。

 今回紹介する論文は、初期治療でバイタルサインが落ち着いているが、出血リスクが高い患者(Glasgow-Blatchford scoreが12点以上)において6時間以内にできるだけ早く内視鏡を行う群と発症から24時間以内に待機的に内視鏡を行う群とで30日後の死亡率などを検討しています。さすがに出血リスクが高い患者では、できる限り内視鏡検査を早く行った方がいいのでしょうか?

 結果として、6時間以内に緊急で内視鏡を行った群で30日後の死亡率などの有意な改善は認めず、24時間以内に待機的に内視鏡を施行する場合と比較して、明確なメリットは示されませんでした。今回の研究では、診断後から日本では認められていない量のPPIを経静脈的に投与しており、実際の日本の医療の現場に適応できるかどうかは難しいところですが、内視鏡のスタッフが豊富に揃っている病院での検討でこのような結果が出たことは、スタッフの確保が難しい地方の病院において、一晩待つことで地元の病院で加療が受けられるというメリットを提供できる可能性が示唆されました。また医師の超過勤務が叫ばれる昨今、激務の消化器内科の先生の負担を減らすことができる結果とも言えるのではないでしょうか。

(担当:阿南医療センター 内科 金子遥祐)

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