TOP > 気になるメディカルトピックス・コラム一覧 > 気になるメディカルトピックス・コラム詳細

気になるメディカルトピックス・コラム

2020/06/29

メトホルミンは腸管から糖を排出する?

糖尿病治療の内服薬には様々な種類があり、それぞれにメリットデメリットがあります。新しいものとしては、腎臓での糖の再吸収を抑えて尿に糖を排泄させるSGLT2阻害薬(ジャディアンス®、スーグラ®、フォシーガ®、ルセフィ®、カナグル®、アプルウェイ®)が本邦で2014年から使用され始め、かなり日常診療に浸透してきました。

 一方でメトホルミン(メトグルコ®)は歴史が古い薬ですが、血糖改善と体重減少効果、脂質低下効果、他剤と比較した低血糖イベントの少なさ、安価であることに加え、悪性腫瘍や心血管イベント発生の抑制効果もあることが過去の研究から示唆されており、第一選択薬として長年使用されています。その作用機序は肝臓での糖新生の抑制と、筋・脂肪組織への糖の取り込みを亢進することで発揮されると考えられてきました。

 しかし近年の研究から、メトホルミン内服者ではPET-CTを撮像した際に腸管での[18F]FDG(糖の代謝産物)の集積亢進を認めることが報告され始めました(Diabetes Res Clin Pract 2017;131:208–216)。今回この現象について詳しく調べるために、CTより空間分解能の高いPET-MRIを利用した研究が行なわれましたのでご紹介します。

 対象は2014年~2016年に[18F]FDG PET-MRIを撮像した神戸大学の患者さんのうち糖尿病であった244人です。除外基準を設けて残ったメトホルミン内服者は50人、内服量は平均750.0±345.8 mgでした。PET-MRIを後ろ向きに解析した結果、メトホルミン内服者では非内服者と比べて回腸と左右半結腸での [18F]FDGの集積が亢進し、腸管壁と腸管腔内に分けて分析すると腸管腔内でのみ集積亢進を認めることが分かりました。ここから新たな推察として、メトホルミンには便中に糖を排泄する作用があるのではないかと考えられています。まだ分子学的経路は解明されていませんが、メトホルミンを内服することで腸細胞の刷子縁側にGLUT2(通常は基底膜側に発現する)が発現し、濃度勾配で糖が腸細胞内から腸管腔側へ放出されている可能性が提示されていました。

 腸内細菌叢にも影響を与えると報告されているメトホルミン。新たな機序について、さらに大規模・前向きな研究や詳しい分子学的経路などの基礎研究が期待されています。

(担当:阿南医療センター 内科 安井沙耶)

2020年度のお知らせ

2018年度のお知らせ

2017年度のお知らせ

2016年度のお知らせ

2015年度のお知らせ