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気になるメディカルトピックス・コラム

2020/06/22

心拍再開(Return Of Spontaneous Circulation:ROSC)後のST上昇がない患者に緊急CAGを施行すべきなのか?

近年、一次救命処置(BLS)が普及しAEDが多くの施設に設置されています。阿南医療センターでも受け入れを行なっていますが、院外での心肺停止(CPA)は未だに死亡率が高く亡くなってしまう方が多い現状があります。CPAの原因は様々ですが、最も多いのが虚血性心疾患と言われており、心拍再開(ROSC)した患者での冠動脈疾患有病率は7割に及ぶとされています。ROSCした患者の心電図でST上昇を認めた場合は緊急CAG/PCIを行うことが推奨されます。しかし、ROSC後にST上昇がない場合でも全例に緊急CAG/PCIを施行した方が良いかどうかは検証されていませんでした。

 初期波形VF/VTの院外CPAでROSCした患者において、ST上昇がなければ神経学的所見の改善後にCAG/PCIを行っても90日生存率に差がないことがオランダの研究で示されました(N Engl J Med 2019;380:1397-407.)。多施設共同の非盲検化ランダム化比較試験で初期波形VF/VTの院外CPAでROSCした患者552人を対象にしています。ST上昇があった方は除外されていますが、虚血を疑うような心電図変化があった方も対象となっています。緊急CAG/PCIを行う群(即時群)と神経学的改善を待ってからCAG/PCIを行う群(待機群)に割り付けられました。CAGまでの時間の中央値は、即時群では2.3時間、待機群では121.9時間でした。両群での90日生存率に差はありませんでした。また、死因は脳死や不可逆的な神経障害がほとんどで、PCIの遅れによる循環死の割合の増加はありませんでした。

 結論として、ST上昇がない患者で待機的にCAG/PCIを行うことが90日生存率の悪化につながらないことが示されました。ただし、目標体温までの時間は有意に待機群の方が早く、即時群でのCAG/PCIの効果を減弱させたかもしれないと考察しています。神経学的予後の改善のため、BLSの普及や体温管理療法の重要性を再確認しました。

 (担当:阿南医療センター内科 堀 太貴)

 

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