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気になるメディカルトピックス・コラム

2020/05/25

SGLT2阻害剤の心臓保護効果は、血糖コントロールを超えた抗炎症作用から

EMPA-REG OUTCOME試験では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(ジャディアンス®錠)が2型糖尿病(T2D)患者において、プラセボとの比較で心血管死を38%, 心不全による入院を35%, 全死亡を32% それぞれ低下させ、経口糖尿病薬による心血管イベントリスクの減少を示した試験として注目されました。ただし、その基盤となるメカニズムは不明であります。

 NLRP3インフラマソームはタンパク質複合体で、免疫メッセンジャーであるインターロイキン(IL)-1βの産生と炎症に関与しています(NLRP3インフラマソームについては、2019/01/05の気になるメディカルトピックス・コラムを参照して下さい)。NLRP3インフラマソームの活性化、およびその後のIL-1β分泌は、アテローム性動脈硬化症および心不全を誘発します(Nature. 2010 )。

 今回、Leeらの研究グループ(延世大学)が、ヒトを対象とした研究で、NLRP3インフラマソーム活性に対するSGLT2阻害剤エンパグリフロジンの効果を検討しました(Nat Commun. 2020 May 1;11(1):2127. doi: 10.1038/s41467-020-15983-6.)。

 方法としては、心血管イベントリスクの高いT2D患者に、SGLT2阻害剤またはスルホニル尿素を30日間投与し、患者マクロファージにおけるNLRP3インフラマソームの活性化を分析しています。

 その結果、SGLT2阻害剤の血糖降下作用はスルホニル尿素と同等でしたが、スルホニル尿素と比較して、血清β-ヒドロキシ酪酸(BHB)の増加と血清インスリンの減少を伴って、マクロファージからのIL-1β分泌を大幅に減少させました。

 また、ヒトマクロファージを用いたex vivo実験で、BHBおよびインスリンがNLRP3インフラマソームの活性化をそれぞれ負および正に制御することを証明しています。

 結論として、SGLT2阻害剤は血糖コントロールとは関係なく、糖尿病にみられる軽度の慢性炎症を減衰させ、これが、心臓保護効果を発揮している可能性があります。

(担当:乙田)

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