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気になるメディカルトピックス・コラム

2018/06/17

オートファジーを標的とするNASH治療薬

 肥満や2型糖尿病によって引き起こされる疾患の1つに、近年注目を集める慢性肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)があります。NASHの病態においては、単に肝細胞に脂肪が蓄積するだけでなく、肝臓に炎症や線維化が惹起されやすくなり、最終的に肝硬変や肝癌に進行することが知られています。しかし現時点では、NASHを治療するための有効な薬剤は存在しておらず、病態を解明し、治療法の開発に繋げることが待ち望まれています。

 オートファジーは主要な細胞内分解機構の一つであり、細胞質成分をリソソームに輸送し分解する現象です。元来、オートファジーは非選択的な分解機構だと考えられていましたが、ミトコンドリアなどのオルガネラ(オルガネラファジー)、細胞内細菌などを選択的に分解していること(選択的オートファジー)が分かってきました。オートファジーの障害により異常ミトコンドリアの蓄積を生じることが活性酸素の過剰産生に繋がると考えられています(図1)。また、これまでの研究により、NASHでは肝臓におけるオートファジーは障害されており、病態進展に関与している可能性が示唆されています。

 

 Leeらの研究グループ(延世大学)は、飽和脂肪酸処置を行った培養肝細胞や、NASHモデルマウスを用いて、小腸コレステロールトランスポーター阻害剤「エゼチミブ(ゼチーア®)」のNASHにおける炎症と線維化に対する治療効果を検討しました(Autophagy. 2017 Oct 3;13(10):1767-1781.)。エゼチミブは脂質異常症に対する治療薬として、すでに臨床現場において使用されています。

本研究では


  • NASH患者さんの肝細胞では、オートファジーが抑制されている

  • エゼチミブは肝臓内のオートファジーを亢進させることで、肝臓における脂肪化、炎症、および線維化を抑制する

  • エゼチミブによる肝臓内のオートファジー亢進は、細胞外小胞を介して、マクロファージ内の炎症を抑制する


ことを明らかにしています(図2)。

 

 本研究成果により、エゼチミブが、オートファジーを標的とし、今まで有効な治療薬が存在しなかったNASH治療薬になりうることが期待されます。 (担当・乙田敏城)

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