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気になるメディカルトピックス・コラム

2017/05/07

糖尿病とアルツハイマー病の不適切な関係

全世界で急増する認知症の中でもアルツハイマー病はその代表的なものの一つです。アルツハイマー病は医学的に大変難しい病気ですが、加えて様々な社会的問題をもたらし医療経済的にも大きな負担となっています。しかし、その原因は十分には解明されておらず、有効な治療法は未だ見出されていません。

 こういった状況の中で、いくつかの臨床研究では糖尿病がアルツハイマー病の増加と関係していることが報告されています。脳萎縮、特に記憶を司る海馬の萎縮がアルツハイマー病の特徴の一つですが、外国の糖尿病患者では非糖尿病患者と比較して海馬が萎縮している可能性が指摘されていました。最近になり、日本人を対象とした海馬萎縮に関する大規模な臨床研究の成果が報告されました(Diabetes Care 39, 1543-1549, 2016)。福岡県久山町在住の1300人余りの方に脳MRI検査を実施したところ、糖尿病患者は非糖尿病患者と比較して統計学的に有意な脳萎縮および海馬萎縮の進行が確認されました。これは認知症と診断されている患者を除いた群においても同様の結果でした。興味深いごとに、空腹時血糖値別ではいずれの群でも差はなかったのですが、2時間後血糖値が高い群では有意に萎縮が進行していました。さらに糖尿病の罹病期間も長いほど脳萎縮が進行していました。

 確かに糖尿病と脳萎縮、ひいては認知症との関係を強く疑わせる結果です。インスリンの鼻腔内投与が認知機能を改善するとの報告もあります。とは言え、両者の因果関係は不明でそれを説明する明確な理屈も明らかになっておらず大きな課題として残されています。世界中の製薬企業がアルツハイマー病の根本的治療薬の開発を行っていますが失敗続きのようです。糖尿病との関係からアルツハイマー病の新たなメカニズムが明らかとなり画期的な治療薬が開発されることを期待して止みません。

(担当:湯浅智之)

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